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政治権力とマスメディア、PR業界による「合意の捏造」が民主主義を無効化する– 。言語学者で批評家のノーム・チョムスキーは、広告業界のリーダー、知識人、社会の指導層の言説を分析し、こう言い切った。

〈彼らはだいたいにおいて(忠実な引用ではなくやや言いかえればだが)一般大衆が「無 知で小うるさい邪魔者だ」と言っていることがわかる。やつらはあまりに愚かなので公共の場から締めだしておくことが必要で、やつらが公的なことに口を出すとろくなことにならない。やつらの仕事は「観客」でいることで「参加者」となることではない、というわけだ。(チョムスキー著、本橋哲也訳『メディア・プロパガンダ』)

チョムスキーの言葉は原発事故汚染水の海洋放出をめぐって私たちが置かれた状況と重なる。テレビCMで「海洋放出は必要、ALPS処理水は安全」というイメージを大衆に刷り込み、高校では自分たちに不都合なことは一切伝えない出前授業を行い、水産業者を懐柔するための海の幸PRイベントを大量に開催し……。本来であれば日本政府は海洋放出の問題点も含めて議論を尽くし、「本当の合意」を目指していくべきだ。しかし、政府はそうしたことに取り組まず、金を湯水のごとく使ったプロパガンダで「偽物の合意」をでっち上げようとしている。マスメディアはそうした政府の企みを指摘せず、むしろ政府と一体化して捏造された合意を国じゅうに広めている。

こんなやり方がまかり通ってしまっては、民主主義はクラゲみたいに骨抜きになってしまう。「海洋放出はYESかNOか」と問われれば、筆者自身は迷わず「NO」と答える。しかし海洋放出という「結果」と同じくらい深刻なのが、合意の捏造という「プロセス」ではないかとも思っている。言い換えれば、海洋放出そのものには「YES」と言う人たちも、この政府、経産省のやり方には「NO」を突きつけるべきだ。
汚染水の海洋放出をめぐって政府(中心は経産省)がやってきたことが実際に「合意の捏造」と言うべきものなのかどうか。本書を読んだ皆さんにジャッジしていただきたい。

※本書の大半は海洋放出が始まる直前の2023年春から夏にかけて書いた。当時の状況や筆者の考えを現在進行形で記述している。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784991174629

説明

原発事故汚染水の海洋放出直前に緊急刊行した同名ZINEに大幅加筆・修正し単行本化。
2024年3月発売予定。

目次
【はじめに】
【Chapter1】政府テレビCMへの違和感
コラム:そもそも汚染水とは?
【Chapter2】CMだけじゃなかった海洋放出PR事業
コラム:本当に安全なの?
【Chapter3】あまりにもいいかげんな高校生向け出張授業
【Chapter4】合意の捏造はいつから?
取材日記:ひとびとの声
【Chapter5】合意の捏造を支える者たち(福島県)
コラム:メデューサか、ピューティアか?
【Chapter6】合意の捏造を支える者たち(マスメディア)
コラム: IAEAよ。お前もか
【Chapter7】市民VS政府・東電
取材日記:経産省幹部との対話
【Chapter8】2023.8.24とその後
【おわりに】

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