福島は今日も雪。

今朝新たに降り積もった雪を見た瞬間、予定していたちょっとした用事を「今度でいいか」と先延ばしし、家でのんびり過ごすことに決めたウネラです。

そんなこんなで自宅に籠もり書き仕事、いやウネリとおしゃべりをして午前はあっという間に過ぎ、ウネリが作ってくれた担々麺を食べ終えて間もなくのことでした。

インターフォンが鳴り、宅配便かと思ってモニターを見ると、そこにはどこかで見たことのあるような、ないような老人が写っていました。

「はい?」私が応答すると

「牧内さん。私は○○町の△△です」

とその人は答えました。

「え?!△△さん!!!」

私は飛び上がり、急いで担々麺の器を流しに移動させ、テーブルの上をざざざっと拭きあげ、部屋の鍵を開けて入り口まで出ていきました。

△△さんとは、次回小社から刊行予定の本の著者です。

「郵便局に行ったら明日には届かないって言うから、(原稿を)持ってきたとこういうわけです」

△△さんはこともなげに言い、茶目っ気たっぷりに笑いました。不在だったらポストへ入れて帰ろうと思っていたとのこと。確かに原稿の締切は明日でしたが……△△さんは福島県内の方なのですが、うちからは遠く80キロ以上離れた山奥にお住まいなのです。

そして△△さんは、御年80歳を超えるご高齢なのであります。

とりあえず宅に上がっていただき、文字通りの粗茶をお出ししつつ、小一時間ほど打ち合わせをしました。

打ち合わせも終盤に差し掛かったころ、△△さんはおもむろに厚みのある封筒を差し出してきました。

「年末に用意ができましたので」

そこに現金が入っているのは明らかでした(金額も書いてあったし)。

ウネリは思わず

「△△さん、危ないっすよ」

といい、△△さんは

「ねえ、刺されちゃうかもしれないねえ」

と笑い、私はわけがわからなくなりました。

それぞれの版元さんよって考え方は違うと思いますが、私たちは少なくとも刊行前に△△さんからお金をもらうことは念頭になかったので、小社の考え方をご説明し、またまた危なくて申し訳ないのですが、封筒ごと丸々お返しいたしました。

△△さんは封筒を無造作に手提げにしまうと、「ああ、車の鍵かけてくるの忘れた」と言いながら席を立ちました。

玄関でお見送りする際、△△さんはごく自然に

「感謝します」

と仰いました。

明日の締切までに届かないからと片道80キロ以上の道のりを雪の中原稿を届けるためだけに車で来てくださった△△さん。ちょっと雪が積もっていたからといって、用事を先延ばしにさせた私。

私は何を思えばいいんだろう……

いろいろと危ないので、この記事は△△さんが無事帰宅されてからアップしたいと思います。来週はこの本の制作にかかり切りになるでしょう。